お知らせ

2022.07.15 【池田成志編】撮影レポート

 知っているか? 憎しみも愛も、根っこをひとつにして咲く花だってことを……。
 昭和の歌謡界の覇権を握った一族の繁栄と転落、その渦中に生きる人々のドラマを歌に乗せて繰り広げる『歌妖曲〜中川大志之丞変化〜』。
 メインヴィジュアル制作の舞台裏レポート、フィナーレを飾るのは、主人公・桜木輝彦こと鳴尾定が復讐の炎を燃やす父親にして、物語のラスボスとも呼べるプロダクション社長・鳴尾勲役の池田成志さん。華麗なる愛と復讐のクロニクル、そのすべてを受け止める覚悟について、静かに、しかし熱を込めて語ってくれました。



池田成志


 主人公・鳴尾定が全身全霊をかけて憎み、追い落とそうとする巨大な父親——池田成志さんといえば、その圧を受け止めるだけの度量を備えた演劇界のベテラン。この日も、飄々とした様子でスタジオに入りながらも、カメラの前に立った瞬間、全身から放たれるものがありました。そう、それは、〝妖〟気とも呼べそうなオーラ。
 「威厳、見せていきましょう!」「ちょっと無頼漢っぽい感じで! 悪そうに!」
 フォトグラファー・池村隆司さんから次々と飛ぶオーダー(今回も熱量増し増し)に、一つひとつ冷静に対処する池田さん。
「テンションの高い撮影なんで、どうすりゃいいんだと多少面食らいましたけど(笑)。でも『あ、これは芝居をすればいいんだな』と。だから、思わず演ってましたね」と、さすが余裕の順応力です。スタジオに流れるのは、昭和を彩ったヒットソングの数々。このヴィジュアル撮影のためにプロデューサーが作ったセットリストで、ずいぶんおさらいしました。
「昭和歌謡、僕はど真ん中の世代じゃないですか? 子どもの頃から聴いてどっぷり浸って、よく歌ってきましたからねぇ。先日亡くなられた西郷輝彦さんの歌とかも。といっても今はコロナ禍で、カラオケにはさっぱり行けてないですが」


池田成志


 台本を一読しての感想を尋ねると「暗い。非常に暗い。暗いなぁ。暗いなぁー!(大声)救いがないなぁ、と思いました」とニヤリ。やはり、主人公の憎しみを受け続ける身としては、心理的な圧も……。
「でも、何か面白いことはできるのかな? とも思いましたね。何しろ、明治座と東宝とヴィレッヂという顔ぶれだし、普通の作品にはならないだろうなと。今もらっている台本の第一稿を読んだ限りでは、勲はどこまでも悪くいなくちゃいけないのか……この男のバックボーンが果たしてどこにあるのか、それは追い追い倉持(裕。作・演出)くんに訊きながら埋めていかなきゃなぁと思っているところです。久しぶりにノート(疑問の洗い出しや、役作りのための覚書などを記す)書いちゃいましたもん。フフフ」


池田成志


 名優の演技ノート、それはぜひ読みたい! 現在感じているもっとも大きな課題は、戦後の芸能界を裸一貫で成り上がってきた俳優であり人気歌手を抱えるプロダクションの社長である男が、鳴尾家という自らの家に固執する理由と、背景にある複雑な家族関係をどう表現するか、ということだとか。
「下敷きにしている『リチャード三世』の場合は、王家というものがあるからあの復讐劇が成立するんだろうけど、鳴尾はそうじゃなくて、戦後のどさくさの中で無茶苦茶なことをやって成り上がってきたわけで。いったいどういう成り立ちをしている家なのか、定のことをなぜそんなに世間から隠そうとしたのか、長女のあやめの母親との関係はどうだったのか、定や利生の母親とはどの程度の恋愛だったのか……などなど、その辺りをきちんと踏まえておかないと、恨まれるのもキツいだろうなと……ってこれ、なんの宣伝にもならないね(笑)。とにかく、本筋となる定の物語、その骨格はしっかりしているので、あとは周りの人間たちもすごく葛藤してるんだと、枝葉末節のところまで面白くあればいいなと思っています」


池田成志


 キャラクターの人間性には、そして行動には、必ず裏付けがなくては。これが、どんな役にも自在に息を吹き込んできた俳優のメソッドなのか……と、素人ながらすっかり説得されてしまう取材者(私ですが)。定という息子にとって血の宿命に抗う物語であると同時に、『歌妖曲』は、勲にとっては築き上げてきた父性の崩壊に直面する物語でもあるのです。むむむ、深い、そして深刻……とついしかめっ面になってしまいそうですが、そこを洒脱にかわせるのもまた、ベテランの技量。
「ものすごく文学的な要素を入れているのにも関わらず、すごく派手な体裁でやろうとしているから、難しい挑戦ですよね。でも、エログロにしても、戯画調にしても、もうちょっと楽しい要素を入れていかないと、観ている人もしんどいじゃないですか(笑)。
 ちょっと思ったのは、僕と山内(圭哉。勲を支える大物フィクサー・大松盛男役)と福田転球(勲の娘婿・映画監督の峰田道明役)が出ているわけだから、何かちょっと昔の思い出に引っ掛けた、愉快なシーンを作ろうと思えば、できるんじゃないかと。山内はギターが弾けるし、転球はめっちゃ歌が上手いので、3人で何かやってみる……そんなシーンを作ってもいいんじゃないの? ってね。面白そうでしょ?」
 面白そうです! っていうか、山内圭哉さんが言っていた「面倒なこと」(→詳しくは山内圭哉さんのレポートをご参照あれ)って、これだったんですね。いやいや、ぜひにもあらまほしい面倒!
「復讐するほうも、ずっと真面目に恨んでなきゃいけないとなると、大変だよねぇ。劇中劇とか入れて、そこで変な役でもできるといいんだけど(笑)。中川大志くん、僕は映像でしか拝見したことがないけど、すごくきれいな顔をしたいい感じの青年で、しかもCMなんかではちょっととぼけた演技もしているじゃないですか。たぶん、そういったこともできる人だろうなと期待してますけど……僕から学ぶこと? いや、それは全然ないと思います(キリッ)」
 立ちポーズの撮影でも、寄り(アップ)の撮影でも、威風堂々の父親像だけでなくコミカルなポーズや表情を混ぜて、どこか微妙な“外し”を狙っている様子も? 池田さん独自の、味わい深いラスボス像は、着々と構築されつつあるようです。


池田成志


「自分で書かない人間は、好きなこと言いますよね(笑)。でも、『僕はこう思ってるけど』ということを、言わないのもどうかな? とも思う。それは誰かが言わなきゃいけないし、腹に収めて稽古するっていうのも、ちょっと気持ちが悪いので。まあ、若干めんどくさいタイプの役者ですが(笑)、稽古が始まったらきっといろいろ疑問が湧くだろう……というのがあらかじめわかっちゃう節もあるので、なるべくそうならずに現場が進むように持っていきたいなと」
 すべては、作品と、ともに作る仲間のために、そして観客のための創意工夫。台本を渡された時点から、役作り、そして場づくりは、始まっているのです。
 予定では、稽古開始は秋風が吹く頃。それまでには、キャスト・スタッフのコミュニケーションが進み、さらに複雑かつ濃厚な音色に練り上げられているに違いない『歌妖曲~中川大志之丞変化~』。メインヴィジュアル撮影レポートはこれでいったん終了ですが、今後も制作過程の様子あれこれを、都度都度、皆さまにお届けしていきます。どうぞ引き続き、ご注目ください!


TEXT:大谷道子 撮影:大関敦

2022.07.08 【山内圭哉編】撮影レポート

 義理と人情を天秤にかければ、義理に傾く世の中で、それでも捨てきれないのが人の情——。そんなしがらみに命を賭けた人々が、己の仁義と欲得のために暗躍した昭和という時代。きらびやかな芸能界と、その周辺で烈しく生きた人々のドラマが繰り広げられる新作音楽劇が、三銃士企画第2弾『歌妖曲~中川大志之丞変化~』です。
 メインヴィジュアル制作の舞台裏をお届けしている現場レポート、今回は物語の主軸となる芸能一家・鳴尾家の繁栄を陰日向に支えるフィクサー・大松盛男に扮する山内圭哉さん、その撮影の様子をお送りします。登場した瞬間から息を呑む迫力! 任侠に生きる男の生きざまと色気が滲み出る渾身のヴィジュアル撮影は、まさしく切った張ったの仁義なき戦い!(?)となりました。



山内圭哉


 ここがスタジオの中でよかった……と、この日ばかりは心底、思いました。なんといっても、この迫力のヴィジュアルです。オレンジ色のヴィヴィッドなスーツに身を包み、濃いサングラスに表情を隠して登場した山内圭哉さん。どっしりとカメラの前に立つと同時に背景に昭和の任侠映画のテーマ音楽が大音量で鳴り響くと、これはもう一同、「おひけえなすって!」(使い方間違ってる)とひれ伏すしかありません。
 その姿に対峙するのが、フォトグラファー・池村隆司さん。実は今回の撮影、この池村さんからの俳優陣への熱い〝煽り〟が評判なんです。まだ台本を一読したのみ、稽古が始まっていない状況で、俳優にいかに役の人物として表現してもらうか……そこが宣伝ヴィジュアル撮影者の腕の見せどころ。
「胸をバーンと張って! 息を溜めて! 魔王だ! 魔王こい!」
 親分を通り越して魔王? たじろぐスタジオ一同ですが、さすがは百戦錬磨の山内さん、少しも動じず、じわじわと大松盛男の威厳をにじませはじめます。


山内圭哉


 古典劇からエンタテインメントまで、幅広い作品への出演歴と、そこで身につけた豊かな表現力を誇る山内圭哉さん。近年は、映像作品で見せるおちゃめな存在感にも注目が高まっています。『歌妖曲』の物語のベースになる『リチャード三世』翻案劇にも出演経験があり(『鉈切り丸』2013年上演)、その魅力を、演じて実感したと言います。
「シェイクスピア作品の中でも随一のピカレスク(悪漢が成り上がる物語)で、やっぱり惹きつけられるものがあるんですよね。負の力で這い上がる気持ちって、ちっちゃいことで言えば『アイツより稼いだろ』とか、大なり小なり誰にもあるものじゃないですか。刹那の欲を追い求めて、上り詰めたときにパァッと散る……そういう、人間の業がギュッと煮詰められた切なさみたいなものが、この作品からも感じられて、台本を読んでまずそこにグッときました」


山内圭哉


 演じる大松盛男は、先代から受け継いだ任侠組織を基軸に、稀代の映画スター・鳴尾勲(演:池田成志)を陰の力で盛り立てながら、自身も日の当たる場所へ貪欲に勢力を伸ばしていこうとする男。その中で、自分を打ち捨てた父・勲を恨む鳴尾定(表の顔はスター歌手、桜木輝彦。演:中川大志)と対峙します。
「大松は策士というか……喧嘩の強さとか、思い切りの良さだけでは生きてない、どっか腹の底では他のこと思うとるんやろな、というイメージを持ちましたね。当時は、芸能と任侠の世界にあまり垣根がなかった時代。コンプライアンスなんか関係ないご時世でしたから、きっと濃い人だらけだったんでしょう。だいたい、あの時代ってフィクサーだらけだったんですよ。町内にもいましたからね。『実はあのおっさん、ごっついらしいで』って言われてる人とか(笑)。
 思えば、『ちゃんと働きたくない』『でもええもん食いたい』『ええ酒飲みたい』みたいな部分って、僕ら芸の世界で生きてる人間と、あんまり変わりがなかったりする。どの方法で行くかだけの違いで、実はおんなじ国の人間だったんじゃないか、という気もしてます」


山内圭哉


 でも最近の若い人たちはみんないい子やからなぁ、と山内さん。
「うまいし努力家やし、それで性格までいいとなると、できすぎてるやろ? って(笑)。中川大志くんも、僕ははじめてですけど、また新しい才能のある人たちと共演できるのは、ほんまに楽しみですね」
 2020年冬に上演された三銃士企画第1作『両国花錦闘士(りょうごくおしゃれりきし)』は、自身が別の演目の公演中だったため未見。しかし、「観に行った知り合いからも、出ていた(福田)転球さん(勲の娘婿・峰田道明役で今作にも出演)からもいろいろ話を聞いていて、ええなあ、楽しそうやなぁと思ってました」と山内さん。シリーズ2作目となる若い座組への期待を、愛情を込めて語ります。
「志をひとつにする人たちが集まってる感じが、いいですよね。本当はきっちりやらないといけないけど、『細かいことはどうでもええから、とにかくおもろいことやろうや』っていう感じの。そういう梁山泊的な、アパッチ砦のような雰囲気で、荒っぽく面白いものを作れる環境、昔はよくありましたけど、最近じゃやっぱり少なくなったんで……。
 自分自身もようやくやりたいことがわかってきて、そのために技術的にはこうすればいいということがそろそろできる年齢になってきたんで、プロデューサーさんたちにもぜひ、存分に好きなことをやってもらいたい。僕ら役者には『おもろいドッグラン、用意しといてな?』って願うだけで。そしたらもう、ものすごい勢いで走りますから! そういう感じでお互いにしっかりやっていけたら、いい公演になると思いますね」



山内圭哉


 顔にペイントを施して、ヴィジュアル撮影もいよいよ大詰め。にじり寄りながらの池村さんの煽りにも、それに応える山内さんの演技にも、ますます熱が入ります。
「なんていうか、あれだ! 肉だ! 肉を喰う! クワァァァッ!」
「噛む! 手を噛む! そう! ウォォォォッシャァァァァ! そして血を舐める!(??)舐めるんだ血を! +*q@q9#?\(もはや聞き取り不能)……じゃ、次にバストアップお願いしまーす(ペコリ)」
 なんやねんその緩急! と山内さんも一同もズッコケながら、無事に撮影は終了。山内さんの額には、すでに玉の汗が浮いています。
「カツアゲ屋になったかと思えば、急に『お願いしまーす』って、なんなんですかあの方(笑)。どっちかにしてほしいんですけど。まあ、これが『歌妖曲』の僕の第一印象ってことで。……そうそう、この間僕、“あの人”に待ち伏せされたんですよね。ええ。なんか、面倒なことが起こりそうですよ」
 最後の最後に、謎の言葉と不敵な笑みを残して去っていった大親分。「あの人」って誰? 「面倒」って何??(不安) その真相は、次回の撮影レポートにて!


TEXT:大谷道子 撮影:田中亜紀

2022.07.01 【中村 中編】撮影レポート

 憎んでいるのに、憎みきれない。それはお互い、愛に飢えた者同士だから──。
 昭和の芸能界に君臨する一家に生まれながら、打ち捨てられて育った男・鳴尾定。スター・桜木輝彦に変身した彼が、血を分けた人々にすら牙を剥く復讐の物語『歌妖曲~中川大志之丞変化~』。メインヴィジュアル撮影の舞台裏レポートの第5回は、定の姉で鳴尾一族の長女、人気歌手としてスポットライトを浴びる一条あやめを演じる中村 中さんの登場です。
 美しさと恐ろしさ、そして何より〝妖しさ〟を表現するなら、この方でなくては!スタジオは終始、ため息に包まれていました。



中村中


 スラリとした長身に腰まである艶やかなロングヘアをなびかせ、スタジオ入りした中村 中さん。パステルグリーンのジャケットがお似合いですが、スカートやハットは真紅、加えてピンヒールにレースの手袋と、ところどころにインパクトを持たせた着こなしが演じる人物の情念を感じさせます。
 切長のアイメイクと真っ赤なルージュは、往年のトップモデル・山口小夜子さんをイメージし、メイクアップアーティスト・YUKA HIRACさんが造形。「メイクもスタイリングもきれいに仕上げていただき、ありがとうございます」と優雅に膝を折ってお辞儀し、中村さんはカメラの前へ。もはや「あやめ様……」と呼びたい雰囲気です。


中村中


 スピーカーから流れる昭和歌謡で、スタジオに漂う情念。それに被せるように、フォトグラファー・池村隆司さんは「艶!艶とエロスで!」と、中村さんにオーダーします(ちなみに、撮影時は午前中)。
 しなやかに体をくねらせたり、長い指を滑らかに動かしながら誘いかけるポーズを決めたりと、的確に応えていく中村さん。その姿から発せられるのは、まさに昭和の匂いです。そのベースには、子どもの頃から聴いてきた歌謡曲の世界のイメージがあるといいます。
「昭和歌謡は華やかで壮大で、生命力を感じます。戦争が終わり、街も人も再生しようとしていた時ですし、エネルギーが必要だったんだと思うんですね。物もない、お金もない、だけど生き残った者はお腹も空くし性欲もあるしフラストレーションも溜まるだろうし、ある意味、生命力剥き出しの状態で。その生命力の受け皿みたいなものが必要だったんだと思います。だから歌い手にも、退廃的な雰囲気のメイクや衣裳が多かったように思うし、歌謡曲が生命力を更に盛り上げる存在として、聴く人を勇気づけていたのではないでしょうか」


中村中


 中村さんが扮する歌手・一条あやめは、身一つから芸能プロダクションを興し芸能界の頂点に上り詰めた鳴尾勲(演:池田成志)の長女。しかし、あやめの母は幼いあやめを捨てて家を出てゆき、その後、彼女は血のつながらない兄弟とともに暮らすことに。烈しい気性と高いプライドを持つ女性ですが、その心の底には、両親から愛されなかった哀しみを常に抱えています。
「血筋や家系から受け継ぐ誇りってあると思うんですけど、それは何をしていても自然と滲み出る品みたいなもので、それを本当に持っている人は凛として見えると思うんですよね。でも、あやめは、その誇りを自ら作り出して、それを必死に守ろうとしている人……という印象を台本から受けました。嫉妬深いのも、実は愛情に飢えているから。『私だけもらえかなった』『私だけもっていない』みたいな感覚なのではないでしょうか」


中村中


 憎しみも、強がりも、すべては傷ついた心の裏返し。そう思うと、あやめはどこか、定と似ているのかもしれません。
「そうですね。私自身は、定の生き方に、とても共感しています。彼としては、ただ普通に扱ってほしい、純粋に人と触れ合いたいと思っているだけなのに、それが他人には理解してもらえず、煙たがられるどころか恐れられるだなんて……寂しいじゃないですか。あやめにも、似ている部分はあると思います。『私はどこにいるんだろう』『ここにいるのよ』ということを訴えたいのでしょう。
 『歌妖曲』に出てくる人って、もしかしたら皆、そういうところがあるのかもしれません。華やかな舞台の裏側で、ジタバタしている人たち。その理由は皆、認めて欲しいとか空しいとか、似ているかも……」
 しかし、あやめは決して哀しいだけの女性としては描かれません。福田転球さん演じる夫で映画監督の峰田道明とのやりとりは、まるで夫婦漫才のよう。そして何より、歌手として繰り広げるであろう華麗なステージングには、大いに期待が高まります。
 「歌う芝居は久しぶりなので、楽しみです。あやめの歌もきっとそうだと思いますが、昭和歌謡は、歌詞の表面で歌われていることと、その内面に込められたことの差が面白いところ。華やか雰囲気とは裏腹な世界が、訳あり人間たちによって繰り広げられると思います」


中村中


 『歌妖曲』が第二弾となる「三銃士企画」については、以前からウェブサイトやツイッターをチェックしていたという中村さん。中でも、〝真剣に「遊び」を作り上げ、真剣に「遊び」を愉しんでいきたい〟というコンセプトに、強く心を動かされたといいます。
「遊びという、すごくわかりやすい言葉を使っているのって、優しいことだと思うんです。優しくない人って、変に難しい言葉を使ったりするイメージがあって。そんな優しい場所に、しばらくいられるということがうれしいんです。とくにここ2年は、世界的にも不安の渦中にあって、優しくない出来事が多いと思います。エネルギー切れというか、私自身、自分を放置してしまいがちな日が多かったので、エネルギッシュな企画に声をかけていただいたことは、救われる思いなんです。遊び、という優しくて強い〝気〟を持った方々と一緒に舞台を作れることが本当に楽しみです」
 インタビュー中に感極まって、思わず涙を浮かべる場面もありましたが、最後に見せた優しい笑顔は、ふわりと花が開いたようでした。憎しみも哀しみも歌に変え、大輪の花がステージに咲き誇る新作音楽劇『歌妖曲~中川大志丞変化~』に、引き続きご期待ください!



TEXT:大谷道子 撮影:大関敦

2022.06.24 【浅利陽介編】撮影レポート

 持たざる者は、奪ってでも成り上がっていくしかない。金も、力も、運命も、すべてその手で──。
 昭和の時代、芸能の表舞台とその影を司る世界に熱く、貪欲に生きた人々。強い執念と底なしの欲望が入り混じり展開する新作音楽劇『歌妖曲~中川大志之丞変化~』に登場するキャラクターたちは、強い執念と底なしの欲望をその身の内に宿した濃い人物像が魅力です。
 メインヴィジュアル制作の舞台裏レポート、第4回は、映像作品に加え近年は舞台でも存在感を示す浅利陽介さん。少年時代から芸能界でキャリアを積んできた人ならではの多彩な表現力は、〝妖(あやかし)〟揃いのキャストの中でどう発揮されるのか? 注目です。



浅利陽介


「さー、行きましょっか!」
 気合いのひとこととともにカメラの前に現れた浅利陽介さん。光沢のあるピンストライプのスーツにタイはレジメン、さらにカラフルなチーフと、柄、柄、柄のオンパレード!  宣伝衣装の高橋毅さん曰く「昭和のネオ・チンピラ」をイメージした派手な衣装を、見事に着こなしての登場です。
「いやぁ、こんなの着たことないですよ(笑)! でも、袖を通した瞬間からタイムスリップするというか、変化(へんげ)できるというか……楽しくなってきますよね。
 世代はぜんぜん違うんですが、やっぱり生まれに昭和(62年)がついているせいか、昭和歌謡には親しみを感じます。その当時の曲って中身がずっしりしてる感じがして、好きだなぁ。それに、新しさも感じますね。自分で歌うなら? うーん、堺正章さんの『さらば恋人』、ガロさんの『学生街の喫茶店』とか。お風呂に入ってるときに、よく歌ってます」


浅利陽介


 実は撮影時、別の舞台に出演中だった浅利さん。休演日にもかかわらず疲れた様子も見せず、フォトグラファー・池村隆司さんをはじめ、撮影スタッフの要望にテキパキと応えていく様子は、さすがプロフェッショナル。そう、浅利さんは4歳から芸能界に身を置き、34歳にしてすでに芸歴は30年以上! という若きベテランです。
「小学生の頃から『なんか……落ち着いてるね』って言われてたんですよ。現場の居方が大御所じゃんって。子どものときからやっていると、自然とそうなってしまうのかなぁ。だから最近は、なるべくそれっぽく見えないように気をつけてます(笑)。控室では端っこの方にいるとか……って言いながらいつもの僕の感じになっちゃうんですけど! まあ、普通にいるっていうのを大事にしてますね」


浅利陽介


 そんな浅利さんが『歌妖曲』で演じるのは、中川大志さん演じる鳴尾定と運命的な出会いをする地回りのヤクザ・徳田誠二。変身した定=スター歌手・桜木輝彦を影で支えながら、ともに歌謡界でトップに成り上がっていこうとする、いわば野望のバディで、輝彦・定の運命を左右するある秘密も握っている重要人物です。
「台本を最初に読んで感じたのは、昭和の人のパワー……もしかしたら今の人間よりも2倍、3倍勢いがあって、裸一貫で何かことを成してやろうという力強さがあったんじゃないか? と。それと、作品の中に織り込まれるその時代の歌謡曲が持つ哀愁だったり、迫力だったり。そういうイメージが頭の中をダーッと駆け巡って、読み終わったとき、ちょっと心拍数が上がっていました。
 徳田はすごく強い人間で、『ゴッドファーザー』のマイケル(演:アル・パチーノ)のような冷徹さも備えた男。そんな部分を出していけたらなぁと思うんですが、僕のこの見た目で突っ張ると、強がってるふうで逆に弱さが前面に出てしまうかもしれないからそれはなんとかしなくちゃなぁと。柴犬みたいなかわいい見た目だけれども、義理や情けといった、肚にひとつ決めたものを持っている。『これだけを見て俺は生きてるんだ』という、なにかに対してすごく忠実になれる人間だからこその怖さというか、そんなイメージを作れたらいいのかなと思ってます」


浅利陽介

 プロデューサー選曲のプレイリストには、内心に孤独を抱えつつ、それを強がりで打ち消しながら肩で風切って生きようとする男の心情を歌った名曲(だいたいわかりますかね?)がズラリ。その歌に徳田の心情を重ねて、ときおりウォーッ! と吼える浅利さん。任侠の世界に生きる者の覚悟と、隠しきれない人間らしさがせめぎあう徳田像が、すでにそこに存在していました。
「作・演出の倉持(裕)さんとは、はじめましてなので、どんな方なのか、どういうものづくりをされるのか、楽しみですね。中川大志くんとは彼が14歳の頃に一度、映像で共演したことがあるんです。当時から安定感というか、どっしりした感じが備わっていて、うん、もう出来上がってたというか……大人でしたよ、14歳にして。『そのまま行って大丈夫だよ!』という感じ。舞台でしっかり絡んで、人となりをさらに知ることができたらいいなと思います」


浅利陽介


 続いて、顔にペイントを施しての撮影。徳田の白は、彼の心根の純粋さ、その表れなのかも……。それは、演じること一途に生きてきた浅利さんにも、きっと通じるものに違いありません。
「まあ、なんだかんだでベテランではあるんですけど(笑)。でも、だからこそいちばんはじめに僕が挑戦して、全力で失敗してっていうのをやっていかないといけないですよね。『俺の背中を見ろ!』じゃないですけど……うん、そういう稽古場にしたいなと思います。自分からどんどん発信して、出鼻をくじかれていって、そこに先輩の(池田)成志さんや山内(圭哉)さん、(福田)転球さんたちも乗ってきてくれたら。
 音楽劇だから、歌も、もちろんやりたいですよ! こんなこと言うとまたアレですけど、僕、子どもの頃にレミゼとか出てたんで(ミュージカル『レ・ミゼラブル』1997年・98年公演で、革命に生きる少年・ガブローシュ役を熱演)、一応、基礎はあるので(笑)。そのあたりも楽しみにしていただければと思いますし、僕も期待してます!」
 浅利さんだから表現できる、男の一途さ、切なさは、ぜひ劇場で。欲望が渦巻く時代を力の限り生き抜く人々の魂の声が響く『歌妖曲~中川大志之丞変化~』、開演の日までどうぞお楽しみに!


TEXT:大谷道子 撮影:田中亜紀

2022.06.17 【福本雄樹編】撮影レポート

 兄さん、あなたの眩しさは、あの日からなんにも変わっちゃいない──。
 昭和の歌謡界を席巻する一族に生まれ、華々しい興隆の影に葬られた男の運命を描く音楽劇『歌妖曲~中川大志之丞変化~』。そのメインヴィジュアル撮影の舞台裏レポート第3回は、中川大志さん演じる定(さだむ)の実の兄でありながら、鳴尾家の〝一人〟息子として育てられたスター・鳴尾利生(なるお・としき)役を演じる福本雄樹さんの登場です。
 福本さんは、唐十郎氏が座長を務める「劇団唐組」の紅テントでの公演をはじめ、小劇場での濃密な作品への出演で演技力を培ってきた、生え抜きの演劇人。本作のような商業演劇作品では最もフレッシュなメインキャストとして挑みます。



福本雄樹


 芸能事務所の社長である父親が押し上げ華麗にデビュー。キャッチフレーズは「窓際のさびしげボーイ」(昭和時代のアイドル歌手には、しばしこうしたキャッチフレーズがつけられました)の大型新人・鳴尾利生。そんな役柄を、一目で「まさに!」と思わせた美しい福本さんの姿。父は戦後に銀幕で活躍した鳴尾勲(池田成志)、母は女優の雪村椿という芸能界のサラブレッドは、甘いマスクの目元に謙虚さとやさしさを滲ませ、「暗さがいい!」と言われるスター歌手・桜木輝彦(中川大志)とは真逆の魅力。二大アイドル的な存在となる役どころに納得させられます。

 きりりとした眉、黒々とした髪の七三分け、ベロアのスーツという、まさに昭和歌謡な出で立ちは爽やかで、高貴な色もお似合いです。けれどその表情には、スタジオに入ったときからなかなかの緊張感が。その華がありながらもどこか不安げな様子に、リアル利生を感じてしまいます。情熱的な芝居で多くの観客を魅了する「唐組」の公演では、野外にテント(ステージ)を建てるところから始め、全身で芝居に打ち込んでいる福本さん。この撮影レポートの写真からはそんな姿、きっと思い浮かびませんよね。そのギャップにもしびれます!


福本雄樹


 利生が歌いそうな昭和歌謡の王道が爆音で流れる中、撮影がスタート。フォトグラファー・池村隆司さんが「好青年で! 爽やかに!」とリクエストすると、福本さんは背筋をまっすぐ伸ばし、シャッター音に誠実に反応しながら、静かにポーズを変えていきます。それに対して池村さんが「そう!」「その目がいい! すごくいい!」と少しずつ温度を上げていくと、それに呼応するように、昭和のスター感がだんだんと引き出されていきました。ポケットに手を入れたり、遠くを見つめながら切ない表情を浮かべたり、かわいい笑顔を見せたり。キラキラと輝きがこぼれ始めると、これはもうスター鳴尾利生です。
「昭和歌謡界の国民的スターということは、周りの期待やプレッシャーもある。利生はそれを敏感に感じ取ることができる空気の読める人間で、そういうものと葛藤しながらステージに立っている。でもどこかで自分に自信がないようなところもあるんだと思います」
 この言葉、どこか撮影中の福本さんとも重なりました。


福本雄樹


 鳴尾利生は、鳴尾一族の長男、芸能事務所・鳴尾プロの秘蔵っ子、期待の大型新人……とさまざまなものを担いながら芸能界を邁進していく、いや、邁進するしかない青年。強烈な個性を放つ鳴尾一族の中では異質とも言える、誠実さとやさしさを持った人間です。そしてただ一人、定に兄として愛情を注ぐ存在で、だからこそ定にとって特別な人です。
「利生と定、ふたりは鳴尾一族の〝光と影〟なんだと思います。利生は定にとっても希望の光のような存在なので、その〝光〟の部分を担いたい。でも利生は本当にただただ定が好きでやさしくしていたのか、そして定にとって利生は本当はどんな存在だったのか、ふたりの心の奥底にはどんな思いがあったのか……そういう部分は稽古で、中川大志さんとつくっていきたいです」

 利生の強い光はもちろん世間にも届きます。彼の歌は大ヒットし、すんなりとスターダムに。変身した定=スター歌手・桜木輝彦とも「二大ヤングアイドル」として売り出され、弟とは知らずに交流を重ねていきます。スターの役を演じるのは初めてだという福本さん。
「最初からスターとして登場する役なので、僕も自分に自信をつけてがんばりたいです。歌謡曲を歌うシーンもありますが、舞台上でマイクを持って歌うのも初めて。いまはボイストレーニングのレッスンを受けているところです。課題曲は尾崎紀世彦さんの『また逢う日まで』」
 あら、その曲は。
「はい。撮影のときにも少し歌いました(笑)」


福本雄樹


 これまでは主に劇団公演に出演してきた福本さん。この「三銃士企画」への出演は、これまでとは違うテイストの芝居への挑戦であり、商業演劇の殿堂への初参加となります。
「決まったときは素直にすごくうれしくて喜んでいたんですけど、いまは、今日の撮影に携わるスタッフさんの数からも感じられる、この企画の規模の大きさにだんだんと緊張感が高まってきました。それでだんだん〝楽しい〟と〝緊張〟が同じくらいになっています。これから〝緊張〟が勝っていくかもしれないですが(笑)、そこはちゃんと乗り越えていきたいです。明治座のような大きな舞台に立つことも初めてですし、僕にとっては今作のほとんどすべてがチャレンジです」
 福本さんの周りに漂っていた緊張感はそれが理由? と思いきや「いえ、これはいつも通りです。もともと緊張しいなので(笑)」と照れ笑い。そこで心強いのは、新ロイヤル大衆舎×KAAT『王将』-三部作-(2021年上演)でも共演した、山内圭哉さんや福田転球さんの存在なのだそう。
「山内さんにも転球さんにもすごくよくしていただきましたから。皆さんが稽古で役をどんなふうにつくっていかれるのか、皆さんに刺激を受けながら自分が鳴尾利生をどんなふうにつくるのか。最終的に舞台上にどんな世界が生まれるのか。それをお客様にどう見ていただけるのか。とても楽しみです」
 ひたすら物腰柔らかな福本さんでしたが、これまでも舞台上でしっかりとした存在感を放ってきた俳優です。明治座でもみせつけてくれるはず!


福本雄樹


 鳴尾一族の〝光〟を背負い、芸能界でもスターとして〝輝き〟を背負う利生。けれど光とは、眩しければ眩しいほど影も黒くなるもの──。きっとまだ誰も見たことのない福本さんの光と影がうつしだされる新作音楽劇『歌妖曲~中川大志之丞変化~』、必見です!


TEXT:中川實穗 撮影:田中亜紀

2022.06.10 【松井玲奈編】撮影レポート

 許さない。呪われた運命も、自分を陥れた宿敵も──。
 昭和の歌謡界に君臨する一族に生まれながらその存在を闇の中に隠された男が、その野望に共鳴する人々と繰り広げるダークで華麗な音楽劇『歌妖曲~中川大志之丞変化~』。情報解禁とともに発表されたメインヴィジュアル制作の舞台裏レポート、第2回は、親の仇と呪う相手へ、中川大志さん演じる主人公・桜木輝彦(鳴尾定)とともに復讐を遂げようとする女性・蘭丸杏役の松井玲奈さんの撮影風景をお届けします。



松井玲奈


 スラリとした長身と長い手足に、小さな顔がグッドバランス。松井玲奈さんといえば、グループのセンターで輝いていた当時から現代的美人という印象でした。その人が、どんなふうに昭和の美女に変身するのか? 撮影前から、スタジオ内の期待は高まります。
「お待たせしました、よろしくお願いします!」
 歯切れのよい声とともに登場した松井さんは、まばゆい純白のジャンプスーツ姿。そして、フィンガーウエーブの女優ヘアに、目元や口元を強調したクラシックかつ華やかなメイク。涼やかなお顔立ちもによく映える! レトロであでやかな昭和の美女の姿が、そこにありました。

松井玲奈

「生まれは平成なんですが、子どもの頃から歌番組などで昭和の歌を聴くことも多かったので、昭和歌謡は決して自分から離れたものではなく、日常的に身近にある歌だと思ってきました。友だちとカラオケに行くと、渡辺真知子さんの『かもめが翔んだ日』などをよく歌いますね。ザ・ピーナッツさん(『恋のバカンス』などヒット曲多数)も大好きです」


松井玲奈


この日もプロデューサー選曲の昭和歌謡プレイリスト(杏ヴァージョン!)がスタジオに大音量で流れる中、まずは立ち姿からの撮影。正面、横向き、振り向きざま。長い手足を舞うように動かしながら、腰のひねりも加えて自在にポーズを取る松井さん。その目は、常に強くカメラを射抜きます。
 匂うように美しくありながら、芯には決して消えることのない炎が……それが、演じる美貌の歌手・蘭丸杏のイメージ。歌謡界を牛耳る芸能プロダクションの長・鳴尾勲(池田成志さん・演)の横槍により会社を潰され失意のうちに息を引き取った父の無念を晴らすために、「蘭丸ミュージック」を興し、鳴尾一族の消された末子・定をスター・桜木輝彦としてプロデュースする杏。父の敵討ちを果たし歌謡界を奪還するという黒い野望が、その胸に燃えているのです。
 「目的のためには手段を選ばないスマートさが、すごく好きだなと思いました」というのが、台本を一読しての松井さんの杏への印象。
「ただダークサイドに落ちているのではなく、杏には杏の信念があるんですよね。一本筋の通った彼女の思いを、観ている人にちゃんと届けなくちゃと。だから、とことん悪に染まりたい! いい人よりも制限がなく、ある意味、なんでもやれるのが悪役のいいところだと思うし、できればそれが、好きになれるような悪さだったら……。かっこいい悪役になりたいですし、いろいろと変化球を投げながら、複雑で豊かなキャラクターにしていけたらと。私と重なるところですか? うーん、杏ほどには非情にはなれない、かな」


松井玲奈


続いて〝寄り〟の表情。ズームアップしたカメラのファインダーには、不敵な笑みが光ります。「冷たい表情も!」とのフォトグラファー・池村博司さんからのリクエストには、冷ややかでありながらもその身の奥の炎を感じさせる表情で応じる松井さん。女性としての魅力を最大限に発揮しつつ、それを武器にするしたたかさと哀しさまで……複雑なキャラクターを、的確に表現していきます。
杏と桜木、そして定の関係は、シェイクスピア作品でいえば、手に手を携え欲望一途に突っ走るマクベス夫人とマクベスのよう。今作が初共演となる中川大志さんに対しては、「スマートでスタイリッシュ、そして何でもできる実力を備えた方」という印象を持ちつつ、スター歌手と醜く打ち捨てられた男の2役をどのように演じるのか、間近で見ることへの期待も高まっているといいます。
「トリッキーなこの役に、中川さんはどんなふうにアプローチしていくのか、そして杏は、桜木と定をどんなふうにサポートしていけるのか……。素の私は人とコミュニケーションを取るのに慎重に時間をかけるタイプですが、杏は会った瞬間からガンガン攻める印象なんですよね。だったら私もそれを見習って、今回は稽古場に入ったときから彼女のように、自分から何でも聞き、どんどん取りに行く! という姿勢でやっていきたいと思っています。ほかの共演者の方々とも、ディスカッションを重ねながら、台本に描かれた世界を、楽しみながらさらに膨らませていけたら」


松井玲奈


 「いいね、OK!」の声で、いったん控室に退いた松井さん。しばしのち、同じスタイリングのまま頬に鮮やかなペイントが施された松井さんがふたたび登場し、杏としてカメラの前に立ちます。
頬のペイントは、誰しもが過去や感情、思惑を隠し持っている──という『歌妖曲』のキャラクターたちの深い内面を象徴するもの。個性的なヴィジュアル表現と流れるアップテンポの音楽に乗って、松井さんのポージングにもますます磨きがかかります。松井さん、そして同じく表現者でもある杏のポテンシャルが感じられるセッション!
 そして、本作ではソロ、そして意外なキャラクターとのデュエット(?)を含め、松井さんの歌唱シーンも、大きな見どころのひとつ。
「台本に『ここにはこんなイメージの歌が入ります』と書かれていたので、それを想像しながら期待を膨らませてはいるんですが、人前で歌うことをもうずいぶん長くしていないので、緊張も……(笑)。でも、杏の情念、その根の深さがきっと曲に乗ってくるんだろうなとも思うので。うん、バッチリやります! どうぞ楽しみにして、劇場にいらしてください」
最後は力強い宣言を、満面の笑顔で発した松井さん。桜木と定をはじめ、登場人物すべてを幻惑し、物語を導く闇色のヒロイン。松井玲奈さんが艶やかに演じ、歌う『歌妖曲~中川大志之丞変化~』、必見です!


TEXT:大谷道子 撮影:田杭孝英

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