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2022.06.10 【松井玲奈編】撮影レポート

 許さない。呪われた運命も、自分を陥れた宿敵も──。
 昭和の歌謡界に君臨する一族に生まれながらその存在を闇の中に隠された男が、その野望に共鳴する人々と繰り広げるダークで華麗な音楽劇『歌妖曲~中川大志之丞変化~』。情報解禁とともに発表されたメインヴィジュアル制作の舞台裏レポート、第2回は、親の仇と呪う相手へ、中川大志さん演じる主人公・桜木輝彦(鳴尾定)とともに復讐を遂げようとする女性・蘭丸杏役の松井玲奈さんの撮影風景をお届けします。



松井玲奈


 スラリとした長身と長い手足に、小さな顔がグッドバランス。松井玲奈さんといえば、グループのセンターで輝いていた当時から現代的美人という印象でした。その人が、どんなふうに昭和の美女に変身するのか? 撮影前から、スタジオ内の期待は高まります。
「お待たせしました、よろしくお願いします!」
 歯切れのよい声とともに登場した松井さんは、まばゆい純白のジャンプスーツ姿。そして、フィンガーウエーブの女優ヘアに、目元や口元を強調したクラシックかつ華やかなメイク。涼やかなお顔立ちもによく映える! レトロであでやかな昭和の美女の姿が、そこにありました。

松井玲奈

「生まれは平成なんですが、子どもの頃から歌番組などで昭和の歌を聴くことも多かったので、昭和歌謡は決して自分から離れたものではなく、日常的に身近にある歌だと思ってきました。友だちとカラオケに行くと、渡辺真知子さんの『かもめが翔んだ日』などをよく歌いますね。ザ・ピーナッツさん(『恋のバカンス』などヒット曲多数)も大好きです」


松井玲奈


この日もプロデューサー選曲の昭和歌謡プレイリスト(杏ヴァージョン!)がスタジオに大音量で流れる中、まずは立ち姿からの撮影。正面、横向き、振り向きざま。長い手足を舞うように動かしながら、腰のひねりも加えて自在にポーズを取る松井さん。その目は、常に強くカメラを射抜きます。
 匂うように美しくありながら、芯には決して消えることのない炎が……それが、演じる美貌の歌手・蘭丸杏のイメージ。歌謡界を牛耳る芸能プロダクションの長・鳴尾勲(池田成志さん・演)の横槍により会社を潰され失意のうちに息を引き取った父の無念を晴らすために、「蘭丸ミュージック」を興し、鳴尾一族の消された末子・定をスター・桜木輝彦としてプロデュースする杏。父の敵討ちを果たし歌謡界を奪還するという黒い野望が、その胸に燃えているのです。
 「目的のためには手段を選ばないスマートさが、すごく好きだなと思いました」というのが、台本を一読しての松井さんの杏への印象。
「ただダークサイドに落ちているのではなく、杏には杏の信念があるんですよね。一本筋の通った彼女の思いを、観ている人にちゃんと届けなくちゃと。だから、とことん悪に染まりたい! いい人よりも制限がなく、ある意味、なんでもやれるのが悪役のいいところだと思うし、できればそれが、好きになれるような悪さだったら……。かっこいい悪役になりたいですし、いろいろと変化球を投げながら、複雑で豊かなキャラクターにしていけたらと。私と重なるところですか? うーん、杏ほどには非情にはなれない、かな」


松井玲奈


続いて〝寄り〟の表情。ズームアップしたカメラのファインダーには、不敵な笑みが光ります。「冷たい表情も!」とのフォトグラファー・池村博司さんからのリクエストには、冷ややかでありながらもその身の奥の炎を感じさせる表情で応じる松井さん。女性としての魅力を最大限に発揮しつつ、それを武器にするしたたかさと哀しさまで……複雑なキャラクターを、的確に表現していきます。
杏と桜木、そして定の関係は、シェイクスピア作品でいえば、手に手を携え欲望一途に突っ走るマクベス夫人とマクベスのよう。今作が初共演となる中川大志さんに対しては、「スマートでスタイリッシュ、そして何でもできる実力を備えた方」という印象を持ちつつ、スター歌手と醜く打ち捨てられた男の2役をどのように演じるのか、間近で見ることへの期待も高まっているといいます。
「トリッキーなこの役に、中川さんはどんなふうにアプローチしていくのか、そして杏は、桜木と定をどんなふうにサポートしていけるのか……。素の私は人とコミュニケーションを取るのに慎重に時間をかけるタイプですが、杏は会った瞬間からガンガン攻める印象なんですよね。だったら私もそれを見習って、今回は稽古場に入ったときから彼女のように、自分から何でも聞き、どんどん取りに行く! という姿勢でやっていきたいと思っています。ほかの共演者の方々とも、ディスカッションを重ねながら、台本に描かれた世界を、楽しみながらさらに膨らませていけたら」


松井玲奈


 「いいね、OK!」の声で、いったん控室に退いた松井さん。しばしのち、同じスタイリングのまま頬に鮮やかなペイントが施された松井さんがふたたび登場し、杏としてカメラの前に立ちます。
頬のペイントは、誰しもが過去や感情、思惑を隠し持っている──という『歌妖曲』のキャラクターたちの深い内面を象徴するもの。個性的なヴィジュアル表現と流れるアップテンポの音楽に乗って、松井さんのポージングにもますます磨きがかかります。松井さん、そして同じく表現者でもある杏のポテンシャルが感じられるセッション!
 そして、本作ではソロ、そして意外なキャラクターとのデュエット(?)を含め、松井さんの歌唱シーンも、大きな見どころのひとつ。
「台本に『ここにはこんなイメージの歌が入ります』と書かれていたので、それを想像しながら期待を膨らませてはいるんですが、人前で歌うことをもうずいぶん長くしていないので、緊張も……(笑)。でも、杏の情念、その根の深さがきっと曲に乗ってくるんだろうなとも思うので。うん、バッチリやります! どうぞ楽しみにして、劇場にいらしてください」
最後は力強い宣言を、満面の笑顔で発した松井さん。桜木と定をはじめ、登場人物すべてを幻惑し、物語を導く闇色のヒロイン。松井玲奈さんが艶やかに演じ、歌う『歌妖曲~中川大志之丞変化~』、必見です!


TEXT:大谷道子 撮影:田杭孝英

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